2016年01月25日

シリーズ⑤「卒業生へのインタビュー」 「和裁と和服がもたらした人生の彩り~今までの道のりを振り返って~」

卒業生へのインタビュー

「和裁と和服がもたらした人生の彩り~今までの道のりを振り返って~」
 
こんにちは、人間文化学科一年のたけばなです。

今回、私は基礎演習のグループ学習のテーマの一つとして、ここ京都ノートルダム女子大学を数年前に卒業された福井出身の近藤謹子さんに、現在の職業である和裁についてインタビューをさせていただきました。この記事ではそのインタビューでお聞きしたことや、また、そこから得た知識、見解をまとめています。質問は「仕事」、「大学」、「京都」、「会社」の大きく分けて4つの分野に分かれています。

*「和裁」の知られざる業界事情

 まずは、「仕事」についての質問をしました。近藤さんが携わっているお仕事の和裁は、和服の製作や、依頼された方の寸法に合わせて服を縫い付ける縫製といった、主に衣類に関する業務内容です。この職業につきたいと考えるようになったきっかけは、ご自宅にもともと着物がたくさんあり、小さなころから近い存在であり興味があった、また、学生時代、人間文化学科の「京都着物学」を受講したことで、本格的に和裁に対して興味が沸いたとのことでした。未経験での一からのスタートで、今も京都で技術を学び続けているそうです。



シリーズ⑤「卒業生へのインタビュー」 「和裁と和服がもたらした人生の彩り~今までの道のりを振り返って~」
この写真の右手前の方が今回インタビューをさせていただいた近藤さんです。



 主に近藤さんが担当するのは着物と着物用のコートです。また、喪服や訪問着も手掛けています。作業をする際に意識していることは、着物のパーツは一つ一つ違うため、お客様が着た時に記事の柄の位置が合うように縫い合わせること、また、喪服に紋を入れる(背紋合わせ)時に特に気持ちを入れて作業を行うそうです。逆に、苦労する、大変だと感じることは、注文を仲介してくれる呉服屋さんに経験者が年々少なくなってきていることによってやりとりが複雑になってきていることだそうです。呉服屋さんが和裁についての知識をあまり持っていない場合、お客さんの注文内容がそのまま近藤さんら和裁の職人さんに伝えられるため、たまに無茶な注文をされることだと語ってくださいました。

 やりがいを感じること、うれしいと思うことはうまくいった場合、その結果が目に見えて体感できることだそうです。手直しがきかない御召(おめし)、生地が分厚く、他の生地とは違って、なかなか針が通らない友禅(ゆうぜん)などといった縫いにくいものを仕上げることが出来た際は特にうれしいとのことでした。

 また、説明の際、近藤さんが普段利用している仕事道具を見せていただきました。


シリーズ⑤「卒業生へのインタビュー」 「和裁と和服がもたらした人生の彩り~今までの道のりを振り返って~」



 こちらの写真の手前に写っている物差しは採寸用の特別な物で、鯨尺(くじらしゃく)といいます。単位がcmではなく、一寸、二寸と数える、とのことで、普段から職人さんたちはこの様な長さの単位で数えているため、cmでの長さの見当がわからなくなる時があるようです。その他に、刺繍用に使用する金糸、縫う際に印を付ける目的で使用するヘラ、また、長く直線に縫う際にヘラの印を目安に引く固形の和裁用石鹸、縫い目を平たくする、折り目をつける、シワを伸ばすといった目的で使用する鏝(こて)など、どれも普段見ることが出来ない貴重なものを見せていただきました。


シリーズ⑤「卒業生へのインタビュー」 「和裁と和服がもたらした人生の彩り~今までの道のりを振り返って~」



 これは丹後(たんご)ちりめんです。熱や水分に弱いため、より慎重に扱って作業を行わなければいけません。今回拝見させていただいたこの写真の生地は絞り染加工が施してある総絞りの生地なので表面に絞りからできた凹凸が一面にあるのが大きな特徴です。

 一連の作業はミシンなどを使うと生地に支障が出るので、すべて手作業で行われます。縫い方は基本形は波縫い、くけ縫い、三つ折りぐけなどとその箇所や生地に合わせて様々なものがあると語っておられました。下の写真は三つ折りぐけの様子です。


シリーズ⑤「卒業生へのインタビュー」 「和裁と和服がもたらした人生の彩り~今までの道のりを振り返って~」



 お客さんの主な年齢層は普段は女性が7割で、年間を通して振袖の注文が多く、年配の方は羽織を注文されることが多いようです。また、着物から羽織、コートから羽織と生地をそのままに作り変えるといったケースもあるとのことでした。定年後、今まで着物とあまり縁がなかった方が目覚める場合もあり、そのため着物の構造などの知識がないまま注文をされることがあるとのことでした。そして、着物を買う際にも、知識がないために、呉服屋さんの提案から高額のブランド物の着物を購入する方も少なくはないようです。まずは周りの冷静な判断が出来る人に相談し、洋服と同じで、値に関係なく自分に似合うものや、本当に自分にとって後悔のないずっと着ていける物を選んでいただけたら、と語っておられました。

*大学生時代~青春の日々~

 次は「大学」についての質問です。大学時代、意識していたことはありますかと質問したところ、「生活の基盤をきちんと立てる」、「講師の方たちが出した課題を必ずこなす」といった学生として基本的なことの他に、「自分の興味のあることに打ち込む」、「楽しく生活する」など、学びと息抜きのバランスを意識していたとのことでした。大学で印象に残ったことは、やはり宗教的な行事に参加したことで、ミッションスクールならではのエピソードだなと思いました。

*面白さと魅力がつまった「京都」

 また、「京都」について、京都自体には独特のいいまわしなど、ほかの土地にはない面白さがあると感じていると府外出身の方ならではの観点で語ってくださいました。自身の仕事は着物=「和」ということもあり、和を前面に押し出している京都のイメージ商売に貢献していると感じているとのことです。

 親元を離れて京都で働こうと思った理由は、京都は特定のものだけではなく、たくさんの和服全体に関するものが入ってくるため、勉強するものが多いと考えたからだと話されていました。確かに、京都は和に関するものが地方からも地元からも豊富に集まっているイメージを私自身も持っていたので学びながら働いてゆくのにはぴったりだと思いました。

京都のおすすめスポットとしては、東山区にある青蓮院(しょうれんいん)と中京区にあるNY店が本店のチョコレートを中心としているMarieBelleを紹介していただきました。前者の青蓮院はクスノキが見事であり、雰囲気がとても好きとのことでした。私も今後、ぜひ行ってみたいなと感じました。

各おすすめスポットのHPのURLです。

青蓮院(しょうれんいん)→ http://www.shorenin.com/
MarieBelle京都本店→ http://www.mariebelle.jp/


*自分のペースで仲間とともに成長できる場所

 「会社」については現在お勤めになられているところを選択した理由は、着物の着付けを教えてもらえるほか、京都ならではの季節の催しを楽しめたり、ある程度は自分のペースで働くことが出来ることが決め手となったと語っていただきました。確かにお給料なども大切ですが、この近藤さんが働いているところのように自分のペースで長く働けるところを選ぶことも本当に大切だなと感じました。

*インタビューを終えて

 ここまで振り返ってみると、ただ単に和裁についての知識を得ただけではなく、近藤さんとのインタビューや、また、取材の事前の準備のため、お話を聞かせていただいたシスターの方々や、講師の方々、ゼミの仲間たちとの交流によって、コミュニケーションがどれほど重要か、そして任されたことをきちんとこなす責任感についての意識を改めて考え直す良いきっかけとなりました。

最後に、近藤さんは、インタビューの中で、「日常着として気軽に楽に着ることができるものを作りたい」という夢を語ってくださいました。また、そのためには今の太い帯をやめ、細いものにしたいとも語っておられました。私も、自分が成し遂げたいと思うことを目標として掲げ、その目標に対して真摯に向き合っていきたいと改めて決意しました。


担当:たけばな(基礎演習Pクラス)

追伸:
シリーズ①はhttp://notredameningen.kyo2.jp/d2016-01-20.html へ
シリーズ②はhttp://notredameningen.kyo2.jp/d2016-01-22.html へ
シリーズ③はhttp://notredameningen.kyo2.jp/d2016-01-23.html へ
シリーズ④はhttp://notredameningen.kyo2.jp/d2016-01-24.html へ

最後に、取材時の写真を紹介しておきます。

シリーズ⑤「卒業生へのインタビュー」 「和裁と和服がもたらした人生の彩り~今までの道のりを振り返って~」

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Posted by 京都ノートルダム女子大学      国際日本文化学科(人間文化学科)  at 08:00 │Comments(0)授業紹介学生の活動報告京都

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