2022年03月18日

『コミュニケーション能力育成 ―音声表現研究をベースとした話しことば教育』 を上梓しました

随分と時間がかかってしまいましたが、2022年3月、これまでの主な研究をまとめ、
『コミュニケーション能力育成 ―音声表現研究をベースとした話しことば教育』
をナカニシヤ出版から上梓いたしました。

『コミュニケーション能力育成 ―音声表現研究をベースとした話しことば教育』 を上梓しました


大きく次の3つのステップで研究を進めてきました。

第1部 コミュニケーション能力育成の手がかり

最初に、音声表現スキルを中心に、コミュニケーション能力育成のための手がかりを得てきました。

具体的には、大学生に求められる能力、職業社会で求められる能力、これまでのコミュニケーション能力育成に関する研究・報告、また音声表現スキル育成のための手がかりとして、効果的なコミュニケーション、音声表現の育成に関する議論、大学生の音声行動の傾向について概観し育成のための手がかりを得るというものです。

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◆第1部を通して

実社会で求められている通り、研究を通して、コミュニケーション能力の必要性を強く実感してきました。しかし、コミュニケーション能力の育成といっても、いったい何をどのようにしていったらいいのでしょうか。その中で、特に音声表現に光を当てて研究を進めてきましたが、話し方に関する一般書が世の中に溢れるほどある中で、そこでは見たことのない大変価値ある関連の研究知見があることに感動したことを思い出します。(これらの研究をされてきた皆様に、心から敬意を表します。)そして、それらの知見を基に実践的研究を進めてきましたが、大学生と社会人とで、音声表現に関する意識と行動に相違があることは、私にとって大きな驚きでした。
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第2部 音声表現スキルの育成

次に、音声表現スキルの育成に関する研究です。

ここでは、まず、短時間の学習プログラムをデザインし、実施の有無によって学習者の音声行動に関する変化について明らかにし、次に、指導上の留意点や実施における示唆を得てきました。さらに、それらを踏まえ、音声表現スキル育成のための大学の授業をデザインし、実施の上、受講者の変化等について質的に検討してきました。
 
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◆第2部を通して

音声表現スキルに光を当てることで、データから様々なことが浮上してきました。例えば、やってみて他の人の様子を見るだけで教示しなくても自身でわかること、教示がないと気が付かないこと、人によって羞恥心や抵抗感など感情面に違いがあることなどです。自明のことのようにも思えることですが、コミュニケーションに関することは、普段の生活に密着していることから、授業等で焦点化する場合、さまざまな工夫や配慮が必要であることをデータから確信することができました。また、学生たちがコミュニケーションに関する力をつけていくための、その在り方が徐々にみえてきたことから、授業者としても自信をもって取り組めるように思いました。
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第3部 話しことば教育の実践

最後に、この京都ノートルダム女子大学 国際日本文化学科で実施している「話しことばプログラム」についてです。

まず、これまでの研究をベースにデザインした話しことばプログラムについて説明しています。次に、それを適用した授業について述べました。さらに、実施後のアンケート調査から特徴を掘り起こし、履修してきた4年次生(就職活動終了者)のインタビュー調査から、話しことばプログラムの有用性について検討しました。

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◆この一連の研究を通して

コミュニケーションという汎用的技能に関して、実社会で役立つ学びの場を提供できないか。能力差、多様性の大きいコミュニケーション能力を高めていってもらうために、何をどのようにしていけばいいのか。就職予備校とは違う「大学」ならではの内容・方法を作り上げていけないか。この一連の研究には、このような様々な思いが込められています。人前で話すこと、コミュニケーションに関して、得意な人たちがもっと「できる」ように、また、苦手意識を持っている人たちが苦手意識から解放され、「楽しめる」ように、さらには、卒業してからも、「自信」をもって「応用」できるように、実社会に資するものになればと改めて思います。
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国際日本文化学科教員 平野美保



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Posted by 京都ノートルダム女子大学      国際日本文化学科(人間文化学科)  at 10:34 │Comments(0)話しことば教育教員の研究活動

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