2020年03月31日

国際図書館連盟における活動

 図書館といえば、どんなイメージをお持ちでしょうか? 本を借りるところ? 調べ物をするところ? もちろんそのための場所でもありますが、それも含めて、図書館は人類の知的遺産の多くを収集し、使いやすくコレクションとして構築し、人々に提供する機関です。そのために、理念から技術に至るまでさまざまな工夫と発展が欠かせません。国際図書館連盟(International Federation of Library Associations and Institutions:IFLA)は、そのための国際的な機関で、毎年8月に開催される年次大会では、国立図書館長会議も開催されます。年次大会では、いくつもの委員会や部会に分かれて、文化遺産の保存・継承から最新情報技術の図書館サービスにおける活用までさまざまなテーマが議論されています。

 日本からは16人の代表委員を出しており、私は現在その中で学校図書館部会の常任委員をしています。学校図書館のサービスは、学校教育と密接に関係しており、国や地域によって学校制度が多様である現状の中で、学校図書館はどのようにこどもたちの読書や学習の支援をしていけばよいのか、ということについて、議論をしたり、ガイドラインを作ったり、具体的な方法を提示したりしています。


国際図書館連盟における活動


学校図書館部会のメンバー 2017年に開催されたブロツワフ(ポーランド)の会議で


 日本の学校図書館は、学校図書館法という法律のもとで、すべての小中高等学校に設置することが義務付けられており、また、児童書が豊富に出版されていること、学校教育が一定以上の水準に保たれていることなどから、比較的恵まれた環境にあるといえます。しかし、実際には課題も多く、他の国や地域の図書館を見学して参考にすることもよくあります。

国際図書館連盟における活動


Athens College(幼稚園から高等学校まである私立学校) 2019年のアテネ(ギリシャ)


 2019年に訪れたこの私立学校の図書館では、学校のカリキュラムと密接した図書館利用が特徴的でした。幼稚園でも、子どもの読書習慣を育成するための工夫が行われており、学年が上がるにしたがって、図書館の活用方法も変わります。国や地域によって、学校図書館の活用において何を重視するかは違います。日本では、長い間読書がそのサービスの中心でしたが、近年、学習における活用の重要性もかなり注目されるようになりました。リテラシー、すなわち読み書きする力の育成を重視する国もあります。また、学校図書館に限らず、図書館は、貧困と非識字の連鎖を断ち切るためのプログラムにも力を入れています。前アメリカ合衆国大統領のオバマ氏は、図書館は子どもにとって魔法の入り口であると言っています。図書館利用によってリテラシーが身につき、それが子どもたちの将来の選択肢を広げることになるから、と。

国際図書館連盟における活動


2017年開館のギリシャの国立図書館 イタリアの建築家レンゾ・ピアノ氏の設計


 古代から人類の文化活動を支えてきた図書館が、未来においてどのように変貌していくのか、図書館情報学に関わる研究活動は常に現場と深く結びつきながら行われます。ハドリアヌスの時代から図書館のあったアテネに、このようにな現代的な国立図書館が建てられたことは、その未来を象徴しているかのようです。
                                     (国際日本文化学科 教員 岩崎れい)






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Posted by 京都ノートルダム女子大学      国際日本文化学科(人間文化学科)  at 23:57 │Comments(0)図書館司書資格教員の研究活動国際交流

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