2014年11月26日

「パウロ書簡の研究について」

 今年度(平成26年度)9月に、札幌の藤女子大学において日本カトリック神学会の学術大会が「信仰と愛の実践」という総合テーマ、「東北・北海道におけるキリスト教の愛の実践を回顧する」というシンポジウム・テーマのもとで開催されました。

 そこで私は「聖パウロのコリント教会における募金活動と共生」というタイトルで研究発表を行いました。キリスト教の教会では、国内外の自然災害で被災された方々のためや、困難な生活を強いられている難民の方々のためなど、現在も募金活動を行っています。キリスト教の信仰と教会の募金活動にはどのような関わりがあるのかを聖パウロの募金活動から学び、教会の募金活動のあるべき姿を探求してゆきたいと考えています。研究発表で扱ったテキストの一つである『コリント人への第二の手紙』をもとに、聖パウロの募金活動についてご紹介いたします。

 新約聖書の書簡を書いた聖パウロは、キリストの愛に駆り立てられて異邦人にキリストの福音を伝えた使徒でしたが、彼は異邦人への宣教と同時に異邦人教会でエルサレムの貧しい信徒のための募金活動を熱心に行っていました。エルサレム教会のユダヤ人キリスト者の信徒たちの中の貧しい人々の窮乏を和らげるために、パウロは、彼の宣教によってキリストを信仰するようになった異邦人たちに、金銭面でエルサレム教会の信徒たちを援助するよう呼びかけました。異邦人の諸教会からの代表者を伴ってエルサレムまで募金を持って行くという計画をしていました。

 マケドニア州の諸教会の信徒たちは、苦しみや試練を受けていて極度の貧しさの中にあったにもかかわらず、エルサレムの貧しい信徒のために惜しまず施すようになりました。パウロはこのことを「神の恵み」による「豊かさ」であると考えています。マケドニア州の信徒たちは貧しい暮らしをしていても、さらに困っている他者を助けようとする喜びが彼らからあふれ出ていたのです。パウロは『コリントの信徒への第二の手紙』の中で、「キリストの恵み」と「慈善の業」の関わりについて書き、コリント教会でも募金活動が自発的に愛を動機として行われるように願いました。

 パウロはイエス・キリストの恵みについて『コリントの信徒への第二の手紙』8章9節で、「主は豊かであったのに、貧しくなられた。それは、主の貧しさによって、あなた方が豊かになるためだったのです。」と書いています。これはキリストが神の子としての天の豊かさをなげうって、貧しい人間と同じものになり、罪がないにも関わらず罪人を救うために十字架の死によって自分の命を捧げられたことを意味します。また、キリストの犠牲によって信じる者が神と和解させられて、命の源である神との交わりによって豊かにされることが表現されています。

 このように、キリストは他者が豊かになるように自分を捧げ尽くしたのであり、キリストを信じて従おうとするキリスト者は、募金活動を通してその愛を実践してキリストと同じ生き方をする機会とすることができるとパウロは考えていました。このようにキリストと同じ愛を実践することによって、遠くに離れた信徒たちが信仰と愛の内に一致する交わり、絆が生まれることをパウロは望んでいました。

「パウロ書簡の研究について」

ND祭でのチャリティー活動

(左がシスター中里、右の2人は本学学生)

 キリスト教大学である本学でも、チャリティー・カフェやチャリティー・バザーや募金活動などを行っていて、学生の皆さんもボランティアとしてとてもよく協力しています。募金を通して遠く離れた人々への祈りの心を届けて絆を深め、さらに善意の人々と共に募金を救援に役立てることによって、すべての善意の人々との交わりをも創ってゆくことができればと願っています。

報告:シスター中里郁子



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Posted by 京都ノートルダム女子大学      国際日本文化学科(人間文化学科)  at 14:15 │Comments(0)カトリック教育教員の研究活動

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