2014年12月30日

日本年中行事論 特別講義を下鴨神社で実施

 

 人間文化学科3・4年次生科目「日本年中行事論」の特別講義を11月と12月、2回にわたり実施しました。受講生50名が賀茂御祖神社(下鴨神社)に赴き、同神社権宮司 宮暘(みや よう)先生の御講義を拝聴しました。下鴨神社での特別講義は、今年で4年目になります。
日本年中行事論 特別講義を下鴨神社で実施


 第1回は、まず同神社秘書課長 中田先生が、30分ほど境内をご案内下さいました。立派な楼門をはじめ神社内の多くの建物が江戸時代に建てられ、重要文化財に指定されていること、「賀茂御祖」である玉依姫命、賀茂建角身命二柱の神を祀る二つの本殿は国宝に指定されていることなどを、実際に巡りながらご説明下さいました。
日本年中行事論 特別講義を下鴨神社で実施



 折しも神社では、21年ごとに本殿の改修を行う「式年遷宮」が行われており、完成間近な新本殿の新しい銅の屋根が見えていました。また、同神社では毎日のように結婚式が行われますが、たまたまその日、一組の新郎新婦が境内で記念撮影をされていました、受講生一同、羨望の眼差しになったこと、もちろんでした。
日本年中行事論 特別講義を下鴨神社で実施


 宮先生のご講義は、まず下鴨神社の歴史からお話下さいました。同神社は平安京ができる前から存在し、大和朝廷からも使者が来ていたこと、本来神社の境内は現在の40倍の広さがあったこと、650年前の応仁の乱で社殿はもちろん糺の森の70%が焼失したこと、明治時代の上知令によって三度にわたり領地が国家に接収され現在の敷地になったこと、など、二千数百年以上の歴史がある神社が、どのように発展し、どんな変化を遂げてきたかについて知りました。
日本年中行事論 特別講義を下鴨神社で実施


 その他、御祭神にまつわるお話、葵祭の由来や意味・歴史、社格のお話など、学生たちにとっては耳新しいお話ばかりでした。とり分け社格については、式内社、官幣大社、十六社、二十二社、勅祭社、諸国一宮などいろいろなランクがある中で、下鴨神社はそのすべてに該当するということで、あらためて同神社の格式の高さを認識しました。

 
 第2回は、宮先生が、受講生の質問にアトランダムにお答え下さる形の御講義でした。

 Q1:神社と寺の違いは何ですか?

 A:神社は神、寺は仏を祀る施設。しかし、神を祀る寺、仏を祀る神社も少なくない。神仏混淆を示す「神宮寺」もある。最近よく用いられる「寺社仏閣」という言葉は間違いで、「神社仏閣」が正しい。「寺社」は江戸時代から用いられた言葉で、それ以前は「社寺」を用いた。

 Q2:毎日掃除をしますか?

 A:はい。神社にとって掃除はとても重要なお勤め。8時の朝拝・朝礼のあと10時まで行う。掃除の持ち場も全員に割り当てられ、3ヶ月に一度変更・交替するようにしている。

 Q3:神社でよく見かける、白紙を折って棒に垂らしてある作り物は何ですか?

 A:御幣(ごへい)。「幣」は、お供え物。「官幣」は、国が御幣を神社に奉るの義。現在、宮中からいただく御幣は五色の絹で、これを箱に入れて神に供える。紙を折って作った飾りは、「紙垂(しで)」と呼ぶ。聖域との結界を示すためにしめ縄を張り、そこに紙垂を垂らす。本来は、清浄な麻の繊維で作ったが、紙でそれに似せて作るようになり、今はそれが主流になってしまった。

 Q4:宮先生はなぜ神主になられたのですか?

 A:神主という言葉は、現在は職掌名としては使わず、もっぱら「神職」を用いる。明治政府は法律で社家制度(神職の世襲制)を廃止し、皇典講究所という神主養成学校(國學院大學など)を作った。誰でも神職に就けるようになったわけで、自分も大学進学にあたり、その道を選ぶことにした。自分の家系では、初めて神主になったかもしれない。

 Q5:おみくじは、何が出るのが最もいいのですか? またどのタイミングで引けばいいのでしょうか?

 A:おみくじの起源は古い。神の思し召しをうかがうのだから、お参りをした後、引くのがよい。必ず何が知りたいかを決めてから引くこと、そして、大吉・大凶にかかわらず、おみくじに書かれた文章をよく読むことが大切。

 Q6:式年遷宮とは何ですか? 実施時期や場所に意味がありますか? 神が移るのですか、神を移すのですか?

 A:神の引越のこと、「御動座(ごどうざ)」とも言う。御神体という語は用いず、「御(ぎょ)」という。すなわち「御の御動座」のこと。そもそも、社殿が設けられたのはそれほど古いことではない。神奈備の森など、全体が祀られるべきものだった。森の中に入ってはいけない場所(禁足地)があり、そこに注連縄が張られ、神のおわします社殿ができた。社殿が作られれば、建て替えが必要になってくる、それが式年遷宮だ。賀茂社の遷宮については、平安時代の『延喜式』に20年ごとにせよと規定されており、満で数えるので、21年目に行う。今回は34度目の実施となる。

 Q7:お賽銭の正しい入れ方はありますか?

 A:いくら、どのような形でお賽銭を入れるのが幸せになれるか―これはみなさんの気持ち次第。いくらお供えをしたとしても、その人の気持ちがきれいでなければ、幸せにはなれない。

 Q8:神職について、男女、国籍の差はありますか?

 A:下鴨神社に現在神職は20名、そのうち女子は2名いる。わが国の職業意識として、女子を登用する点では神職がもっとも早いのではないか。それは女子特有の霊性に関係する。外国人については、東京の某神社で例がある。神社本庁が適任と判断すれば資格を与える。

日本年中行事論 特別講義を下鴨神社で実施



【以下、受講した学生たちの感想】

・神社には何度も足を運んだことがありました。しかし、漠然とした知識しかなく、由来など詳しいことはまったく知りませんでした。ですから今日、宮先生の詳しい御講義を聴くことができ、本当によかったです。(T・Nさん)

・下鴨神社の歴史における大きさがよくわかりました。「京都を代表する神社」というイメージが「長い歴史をもち、大きな意味をもつ神社」に変わりました。社格一つとっても、これほど意味や種類がたくさんあることを知り、驚きました。とてもいい勉強になりました。(S・Hさん)

・さまざまな質問があり、その答えを聞いていると、気になることばかりで、とても勉強になりました。知識が増えてうれしいです。(K・Eさん)

・神社は、しょっちゅうお参りする身近な場所ですが、知識をもっているのともっていないのとでは、お参りする際に大きく異なってくるので、このたびのお話が聞けて、とてもよかったです。有り難うございました。(T・Yさん)

・ふだん聞くことができない貴重なお話で、非常に興味深かったです。神職さんの学校があることを初めて知りました。いったいどんなことを学ぶのか、とても気になります。女性の神職さんもいらっしゃるのですね。女性は巫女さんにしかなれないものだと思っていましたので、驚きました。 (A・Yさん)

・天照大神が瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)を下界に遣わした時に与えた三大神勅のお話が特に印象に残りました。すなわち天壌無窮、神鏡奉斎、斎庭稲穂。稲が日本神道で重視される意味が分かりました。 (W・Jさん)

(文責 堀勝博)

 
  


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Posted by 京都ノートルダム女子大学      国際日本文化学科(人間文化学科)  at 11:23 │Comments(0)授業紹介日本語日本文化領域

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