2020年03月23日

研究活動報告  ―― 堀勝博

 研究活動について報告するよう求められましたので、書くことにします。

 私は、本学では、国語科教員免許課程、日本語教員養成課程を担当していますが、専門は古代日本語、古代和歌文学の研究です(以前、当ブログでも報告しました)。

 この3月に、拙文が2件、刊行されますので、ご報告します。

 一つは、去年6月に学科で実施した公開講座「小泉八雲 多文化の協奏 Kwaidanと怪談」のパネルトークで発表した「蓬莱」について、話の概要を3ページにまとめました。

 「蓬莱」というと、「豚まん」(これは関西の言い方。他の地方では「肉まん」)を連想する方が多いでしょうが、そうではなく、古来、仙人の棲む不老長寿の国のことであり、同時にそれは「日本」を意味する語でもありました。ギリシャ生まれで、アメリカの新聞記者を経て日本に移り住んだ小泉八雲(Lafcadio Hearn)が、なぜ『Kwaidan』という作品集の最後に、お化けが出るわけでもなく、恐ろしくもない「蓬莱」という文章を書いたのか、私なりに考察してみました。

研究活動報告  ―― 堀勝博
               (京都ノートルダム図書館蔵『山海経』より 蓬莱の図)


 もう一つは、「京都ノートルダム女子大学紀要」第50号に掲載予定の論文「井戸茶碗名義考」です。「井戸茶碗」という茶碗は、茶道をなさる方は聞いたことがあると思います。高麗茶碗の一種で、名品中の名品として知られ、日本にのみ百数十碗伝来しています。

 私は、茶の湯の心得はありませんが、この「井戸茶碗」という名称に、若い頃から興味がありました。なぜ「井戸」というのかなあ、と。茶道に関わる昔の人々も、最も有名な茶碗だけに、その名前の意味について、あれこれ考察をしてきました。今回調べてみたところ、もういろんな人が言いたい放題の説を立てており、諸説紛々たる状況でした。

 これについて、私なりに整理し、一応の見解を立ててみました。もしご興味があるようでしたら、本学紀要最新号をお読みください(本学学術情報センターリポジトリでも公開される予定です)。

 私が出した結論は、井戸茶碗に特徴的な、カイラギ(梅花皮)をヒントにしました。カイラギとは、鮫の皮のように、細かくつぶだって割れたように見える模様のことです。それを見た茶人たちが、「井戸」という名称で呼んだのだと結論づけました。詳細は、論文にて。



研究活動報告  ―― 堀勝博
(カイラギ:サメの皮のこと。また井戸茶碗に特有の器肌の模様。写真は鮫皮を使ったおろし器。   大富農産のホームページより転載



 現在は、もっぱら、兵庫県播磨地方の和歌について研究しています。こちらは、いつになるかわかりませんが、書籍としてまとめられればと思っています。


(令和2年3月21日記)






 



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Posted by 京都ノートルダム女子大学      国際日本文化学科(人間文化学科)  at 12:15 │Comments(0)日本語日本文化領域教員の研究活動

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