国際シンポジウム「西洋美術におけるユートピアの表象」で発表しました(2020年11月)

京都ノートルダム女子大学      国際日本文化学科(人間文化学科)

2021年03月15日 15:47

2020年は、コロナ禍により、私の所属する学会でも、
オンラインでの学会開催がすっかりスタンダードとなりました。

そんな中、11月28日に国際シンポジウム「西洋美術におけるユートピアの表象」で発表しました。
(主催:京都工芸繊維大学・日仏美術学会 助成:公益財団法人村田学術振興財団)
こちらは、京都工芸繊維大学の永井隆則先生(セザンヌの有名な研究者です)にお招きいただいたものです。

国際シンポジウムでは、時差や通訳など、多数の調整が必要になります。
ご準備くださった永井先生はじめ関係各位の皆様には深く感謝申し上げます。

全体の概要は京都工芸繊維大学のホームページにも掲載されています。
https://www.kit.ac.jp/2020/12/symposium-report20201128/

私のテーマは
『つかのまのユートピアとしての雅宴画とその系譜』
でした。

このシンポジウムは「ユートピア」をテーマにしています。
私は18世紀のフランス美術が専門ですので、そこに結び付けていくわけですが、
18世紀のフランスというと、ユートピア文学花盛りの時代なのですが、
それが絵画化されるということはありません。
そこで、ユートピア的な状況を描いた種類の絵画として、
「雅宴画」を取り上げて論じました。

雅宴画とは、着飾った男女が屋外で雅に交流する情景を描いた絵画で、
18世紀のフランスで生まれ、消えていった画題です。
雅宴画の嚆矢といえるのがヴァトー《シテール島への巡礼》(1717年、ルーヴル美術館所蔵)。
(シテール島への船出というタイトルでも呼ばれます。このタイトル自体が結構問題です)


そして、私が雅宴画のバリエーション(風景画に近いのですが、雅宴画なくしては生まれなかった、子孫といえるような作品)の最後の時期だと考えるフラゴナール《サン・クルーの祭》(1775~80年、フランス銀行所蔵)。


この2点の間の雅宴画の展開を「演劇との関係」「自然描写」「男女の振る舞い」の三つの観点から検討しました。

演劇の世界から生まれた雅宴画は、はかない虚構の世界です。しかし、それを構成している自然と人間の描写は、かなりの程度現実を反映していました。雅宴画は、18世紀の人々にとっては、現実の延長線上にあるユートピアだったのではないか・・・というのが結論です。

他の発表者の方々は、
古代、プッサン(17世紀の画家)、シャヴァンヌ(19世紀の画家)について、
充実した発表をされており、
(アメリカは早朝・イギリスは昼・日本は夜という状況ではありましたが)
扱う時代も発表する場所も壮大なシンポジウムでした。
自分としては反省ばかりなのですが、参加させていただけて本当に有難いことだったと思っています。
また、発表内容は、来年度に本学の紀要に投稿できたらなと考えています。

(吉田朋子)



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