三四郎は揺らぐ 日本近代文学講読
授業「日本近代文学講読」では、
夏目漱石「三四郎」を読んでいます。
三四郎は、
熊本の高等学校(旧制)を卒業して、
東京帝国大学に入学するため、
上京してきます。
日露戦争が終わり、
連載の始まった一九〇八年頃を、
舞台としているので、
東京帝国大学、京都帝国大学しか、
大学がない時代です。
(時期によっては、東北帝国大学が、
設立されているかもしれません。)
いわば、三四郎は、
当時のエリート、ということになります。
(ただ、文科なので、
あまり出世はできないようです。)
どうやら学歴を自慢している気配が、
小説の描写の中に、読み取れます。
ところが、東京へ向かう列車の中で、
その自信は、揺らいでいきます。
まずは、女性。
「あなたはよっぽど度胸のないかたですね」と、
言われて、へこみます。
次に、ものを知っているような男性。
「日本より頭の中のほうが広いでしょう」と、
言われて、熊本の時の自分は、
「卑怯」だと思います。
自分の世界が狭かったことを、
自覚するわけですね。
漱石の意図は、
もう少し深いところにあると思いますが、
私たちも、自分の世界の狭さを知ることは、
よくあります。
特に、学校が上にあがり、
社会に出ると、
それぞれのルールは、
そこだけでしか、通用しないことがわかります。
そういう意味では、
自信が揺らぐことも、
悪くはないと思います。
揺らぐことで、
世界が広がるきっかけが、
得られるわけです。
報告:長沼光彦
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