三四郎は揺らぐ 日本近代文学講読

京都ノートルダム女子大学      国際日本文化学科(人間文化学科)

2017年10月22日 17:22


授業「日本近代文学講読」では、
夏目漱石「三四郎」を読んでいます。



三四郎は、
熊本の高等学校(旧制)を卒業して、
東京帝国大学に入学するため、
上京してきます。


日露戦争が終わり、
連載の始まった一九〇八年頃を、
舞台としているので、
東京帝国大学、京都帝国大学しか、
大学がない時代です。

(時期によっては、東北帝国大学が、
設立されているかもしれません。)


いわば、三四郎は、
当時のエリート、ということになります。

(ただ、文科なので、
あまり出世はできないようです。)


どうやら学歴を自慢している気配が、
小説の描写の中に、読み取れます。




ところが、東京へ向かう列車の中で、
その自信は、揺らいでいきます。

まずは、女性。
「あなたはよっぽど度胸のないかたですね」と、
言われて、へこみます。

次に、ものを知っているような男性。
「日本より頭の中のほうが広いでしょう」と、
言われて、熊本の時の自分は、
「卑怯」だと思います。

自分の世界が狭かったことを、
自覚するわけですね。


漱石の意図は、
もう少し深いところにあると思いますが、
私たちも、自分の世界の狭さを知ることは、
よくあります。

特に、学校が上にあがり、
社会に出ると、
それぞれのルールは、
そこだけでしか、通用しないことがわかります。


そういう意味では、
自信が揺らぐことも、
悪くはないと思います。

揺らぐことで、
世界が広がるきっかけが、
得られるわけです。


報告:長沼光彦




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