現実を知れ、という前に

京都ノートルダム女子大学      国際日本文化学科(人間文化学科)

2016年02月29日 17:00

この時期、3年生は、
就活で忙しくなります。

学生たちは、就職がイヤだなとか、
遊びに行きたい、とか、ぼやいたりします。

そういう、ぐずぐずしている様子を見ると、
そんなこと言ってないで、まず活動したらいい、
現実を見なさい、とか言いたくなったりします



ここでいう現実とは何でしょうか、
人間は働かなければ食べられない、
みんなそうしている、
というような、「常識」でしょうか。

しかし、実際今世の中で起きていることは、
こういう常識が通用しなかったりします。
ブラック企業などと呼ばれる会社があったり、
真面目に働いても報われない場合もあります。

会社の商品自体が人気がなくなって、
運営方針を変えなければいけない、
ということも、たびたび起こります。
何十年も同じ方針を続けることは、
難しい世の現状です。



学生がぐずぐず言うのは、
単に働きたくない場合もあるかもしれませんが、
こういうややこしい現実に、
対応する困難を感じている場合もあります。

すでに社会人である年長者が、
難しいと思っていることですから、
学生に気楽に考えろ、
と簡単に言ううわけにもいきません。

こういう難しい問題に対しては、
社会人自身がぐずぐすしている場合も、
多いかと思います。


実は、このぐずぐず感は、
世の中の実情をきちんと捉えている証拠でもあります。



文科省も、このように、とらえがたく変化する世の中を、
グローバル社会の特徴と考え、
これに対応する人材を育てることを、
目標としようとしています。

このブログでよく取り上げる、
アクティブラーニングは、
その方法として、文科省より提案されています。

つまり、世の中の実態を知っているゆえに起こる、
ぐずぐず感を、
行動に転換できるような発想を身につけよう、
ということです。



とはいえ、文科省の人達も、
なかなか、厳しいことをいうなあ、
と思います。

社会人の先輩も、ぐずぐずしていることに、
若者が主体的に対応できるようになるのは、
なかなか難しいことでしょう。



身近に学生と会っている立場からすれば、
ぐずぐずも悪いことではないと思います。
ぐずぐず言うのは、
現実を捉えているわけですから、
何とか対応しようとしする、
気持ちの現れでもあると思うからです。


必要なことは、そのぐずぐずから、
行動に移そうとするための動機、
モチベーションでしょう。
また、たとえうまくいかなくても、
その挑戦を持続できる気持ちの持ち方だと思います。

一時は誰かにぐずぐず言っていても良いのですが、
そこから、ふんぎって、活動する、
気分転換と勇気が必要でしょう。


では、その気分転換と勇気はどこから来るでしょうか。
自分の周囲にいる人や生活への信頼から来る、
と思います。

周囲にいる人が好きだから、
自分のライフスタイルを肯定できるから、
やっぱりがんばろう、と思うのではないでしょうか。


文科省のいう、アクティブラーニングは、
特に異文化コミュニケーションを重んじていますが、
身近な人、地域社会との関わりも大切です。

そういう信頼感を作り上げる、
コミュニケーションについても、
在学中に考えてもらえると良いと思っています。

本学の学生は、もともと、
そういう関係を大切にする人たちだと思います。


報告:長沼光彦




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