「三四郎」の京都

京都ノートルダム女子大学      国際日本文化学科(人間文化学科)

2016年01月27日 23:06

先日、授業で夏目漱石「三四郎」を読んでいると、
お話ししました。

15回の授業を終わり、受講した皆さんは、
レポートの準備をしています。
(早々と提出した方もいましたが)


本日は、「三四郎」に出てきた京都の話を、
紹介します。

三四郎は熊本出身ですが、
東京帝国大学に入学するため、
汽車を乗り継いで、上京します。

(ちなみに、当時は新幹線などありませんから、
途中で宿泊しながら、移動します。)

汽車の中で女の人と同席になるのですが、
「女とは京都からの相乗である。」と本文に紹介されています。

この女の人とは、名古屋で降りて、
その気もないのに、
同宿することになってしまうのですが、
それはまた別の話。

この女の人が言うには、
「子供の玩具(おもちゃ)は矢っ張り
広島より京都の方が安くつて善いものがある。
京都で一寸(ちょっと)用があつて下りた序(ついで)に、
蛸薬師(たこやくし)の傍で玩具を買つて来た。
久し振で国へ帰つて小供に逢ふのは嬉しい。」
という話です。

明治に、東京に都が遷ったことをきっかけに、
新しい時代に合わせて、
あらためて京都の産業を盛んにしようという
動きが起きてきました。

前にも少し紹介したのですが
蛸薬師のある新京極(しんきょうごく)は、
寺町通にあったお寺の境内を再開発し、
映画館や劇場を設置した繁華街でした。


三四郎が列車で出会った女の人は、
明治に再開発された繁華街、
新京極で買い物をした、
というわけです。

こういうちょっとしたことを知っているだけで、
小説の中味が身近に感じられます。

いろいろな小説の中から、
京都の話を探してみるのも、
面白いと思います。

報告:長沼光彦



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