2017年04月04日

ハンガリーのローラン大学での学会発表

 春休み中の2月9日〜2月16日までヨーロッパへ出張してきました。ハンガリーのローラン大学にある孔子学院で開かれた中国語教育シンポジウムに参加、発表するのが目的です。
ハンガリーのローラン大学での学会発表

 研究分担者として獲得している科学研究費(挑戦的萌芽研究15K1292)の研究関係でこのシンポジウムに参加しました。この研究の目的は、大学の外国語教育現場で多言語環境を構築し、英語による中国語学習の可能性を考察することです。9月に一度香港城市大学での英語による中国語授業を見学しましたが、今回はヨーロッパで中国語を教授している専門家から多くの発表を聞き、さらに私も日本での実践を発表しました。










ハンガリーのローラン大学での学会発表
 ヨーロッパはもともと多言語環境の整ったところです。彼らは、母語(ドイツ語、スペイン語、スロバキア語、オランダ語など)と英語との両方を用いて、中国語を学習することが出来ています。この点においては日本の外国語学習現場はまだまだ多言語環境とは言えない状況です。日本で多言語環境を構築していくために、どのような実践が必要かが私の発表の主旨です。私は「中国語教育におけるいくつかの新しい挑戦」というテーマで発表し、現場で実践したいくつかの新しい方法を紹介し、英語で中国語を教授する方法を試みていることを報告しました。その主な内容は次のようなものです(中国語で発表したため、パワーポイントは中国語となっています)。




1.日本の大学での中国語教育現状
ハンガリーのローラン大学での学会発表左の写真のように、現在日本は775校があり、約287万の在学生がいます。








ハンガリーのローラン大学での学会発表
左の写真のように現在624校の大学に中国語の科目が置かれていて、在学生の81.7%が中国語を履修しています。英語に次ぐ2番目の外国語学習人口です。







2.中国語教育現場の問題点
 中国語の学習人口は一見多いようですが、その多くは第二外国語として履修してます。学生の学習の動機は単位の獲得にあり、将来のキャリアに役立つ実学としての認識はあまりありません。いわば消極的な学習者です。このような現状を改善していくために、私は大学生のスマホ所有率の高さに注目し、いくつかの実践を行いました。

3.いくつかの新しい試み
① スマートフォンを使用する
ハンガリーのローラン大学での学会発表
左の写真で分かるように、大学生のスマートフォンの所有率は年々増加する一方です。教科書の紙媒体だけではなく、スマートフォンにダウンロード出来るアプリも作られています。現在私が使用している教科書では、宿題の指示などをすべてスマートフォンで聞けるようになっています。



②アプリを利用する
ハンガリーのローラン大学での学会発表左の写真のように、授業中に、アプリのYobiquitous Text〈関西大学卒業生樋口拓弥さんが開発したもの〉を導入する。ボタン一つで単語、文章のリピート練習、シャドーイング練習などができます。スピードの調整も自由自在。個々の学生の学習能力に応じて調整できる優れものです。




③もう一つのアプリ
ハンガリーのローラン大学での学会発表また、左の写真の、アプリQuizlet(これはアメリカで開発されたもので、大阪府立大学の清原文代先生が最初に中国語教育に導入したものです)を利用して、宿題、復習などの指示を学生に与えています。このアプリは、単語カード、テスト、ゲームなどの機能がついているので、教員が学習して欲しい単語とセンテンスを入力するだけで、アプリは自動的に、音声、単語カード、テスト、ゲームなどを作成してくれます。学生にとっても便利で手軽に外国語学習ができるアプリです。左のように、今は中国語と日本語で対応していますが、将来的に中国語と英語で対応させ、英語で中国語を学習する試みをしたいと考えています。














4.これからの計画—英語による中国語学習の第一歩
ハンガリーのローラン大学での学会発表
左の写真のように、現在英語-中国語の小冊子を制作中です。将来的には日本語を使わずに、英語で中国語を学習することを実現したいと考えています。その第一歩として、出来るだけシンプルな英語を使用することを心がけています。




 以上は今回の発表のダイジェストです。正直なところ、この研究はまだまだ方向性を探っている途中です。残りの1年間の研究期間中で、しっかりした方向性を定め、ある程度の成果を上げたいと考えています。

                                                                  報告:朱鳳



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Posted by 京都ノートルダム女子大学      国際日本文化学科(人間文化学科)  at 17:36 │Comments(0)教員の研究活動

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