2016年05月16日

国文学概論 言葉をいろいろな角度から解釈してみる

国文学概論では、ひきつづき、
「走れメロス」をとりあげ、

小説の読み方について、
考えています。
国文学概論 言葉をいろいろな角度から解釈してみる


小説のことばは、
何度も読み返してみる必要があります。


「メロスは、激怒した。
必ず、かの邪知暴虐の王を除かねばならぬと決意した。」
と、小説は始まります。

しかし、続けて、
「メロスは政治が分からぬ。メロスは牧人である。
笛を吹き、羊と遊んで暮らしてきた。」
とあります。

ただし、
「けれども邪悪に対しては、
人一倍に敏感であった。」
というのです。
国文学概論 言葉をいろいろな角度から解釈してみる



悪い王様をやっつけると決意したにもかかわらず、
政治はわからない、というのは、
いささか無責任のような気もします。

学生の意見を聞くと、
「無知」「感情的」という言葉も出てきます。


とはいえ、政治が分からない、
ことが必ずしも悪い意味だとは、
限りません。

政治には、ずる賢いことをする、
という意味が含まれる場合もあります。

そういう政治の世界に疎いメロスは、
純粋な人間、ということもできます。

だから、純粋に悪に怒っている、
と読むこともできます。
国文学概論 言葉をいろいろな角度から解釈してみる


一方で、無知な面も書かれているでしょう。
王様がゆるせないと思ったメロスは、
「買い物を、背負ったままで、
のそのそ王城に入っていった。」とあります。
「のそのそ」は、あまりほめているようには、
思えない表現ですね。


おもしろい小説は、
言葉がいろいろな意味に解釈できます。

白か黒かはっきりしないと、
迷ってしまうかもしれません。

しかし、そういうふうに、
迷わせるところに、
自分で考えて読む余地があり、
小説を読む面白味があるのです。

とくに太宰治の小説は、
そういう特徴があります。
国文学概論 言葉をいろいろな角度から解釈してみる

報告:長沼光彦




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Posted by 京都ノートルダム女子大学      国際日本文化学科(人間文化学科)  at 17:00 │Comments(0)授業紹介日本語日本文化領域

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