2017年06月02日

メロスは何のために走る 国文学概論


「走れメロス」というと、
友情の物語という、
印象が強いと思います。



ところが、よく読むと、
「身代りの友を救う為に走るのだ」
「王の奸佞邪智を打ち破る為に走るのだ」
と言いつつ、
「若い時から名誉を守れ」とも言っています。


友情、正義、の他に、
それらを大切にする、
自己の実現ということも、
メロスの動機になっているわけです。


友情を「献身」だと考えるならば、
自分の名誉を重んじる、
自己実現は、相容れない要素のようにも、
思われます。




ともかくも、メロスの中では、
友情と、正義と、名誉は、
一体化しているようです。

また、それゆえに、
道の途中で、挫折しそうになった、
メロスの悩みも、
複雑になっています。

友情も、正義も、名誉も、
どれも達成できないものとして、
逆にメロスの重荷となっていくのです。

「ああ、もう、どうでもいい」
その結果、やけくそになって、
すべてを投げだそうと、
したりもします。




「走れメロス」を、
友情以外の要素から読もうとする評論に、
寺山修司「歩けメロス」があります。

こちらも、読んでみてください。

報告:長沼光彦
  


Posted by 京都ノートルダム女子大学      国際日本文化学科(人間文化学科)  at 19:59Comments(0)授業紹介日本語日本文化領域